GABA にはホントにストレス緩和の効果があるの?

先日、機能性表示食品「モリンガGABA」を院長先生クラスの医師数人の前でプレゼンさせていただいたのですが、その時「GABAは水溶性なのにどうやって脳に入り込んで作用するんですか?」と聞かれて答えられなかったのですが、それから大学の先生に聞いてGABAは水溶性で、アミノ酸なので、脳に届くんです。タンパク質などの高分子ですと、脳血液関門というのがあり、脳には行かないとされていますが、グルコースやアミノ酸は(分子が小さいから)脳に入ります。とのお答えをいただき納得したところでした。そんなおり、下記のような研究結果を見つけました。とある大学が2011年に発表した研究紀要を拝見していて気になったのでメモ代わりに残します。果たして GABA にはストレス緩和の効果はあるか…というタイトルです。

ヒトクロモグラニンA(唾液中に含まれるストレスを図ることができるホルモン)とアミラーゼ活性(唾液中のアミラーゼの活性を測定することでストレスの度合いを測ることができる)を中心とした検討という題名の研究結果報告書です。

所々単語の意味を添えさせていただいております。(前置き省略)「本研究では, ストレス評価指標の中でも特に有用とされているクロモグラニンA(CgA)濃度と α-アミラーゼ活性を用いて, 摂取時期をストレス負荷前後の2区に分け摂取時期の違いがストレス緩和効果に与える影響を比較検討した。GABAは生物界に広く分布する非タンパク質構成性アミノ酸の一種であり, 野菜, 果実をはじめとする各種食品に含まれている。GABA は抗ストレス作用7,8), 精神安定作用6)等が報告されており,GABA を含む食品にはストレス軽減作用が期待できる。本研究では, GABA のストレス軽減効果についてこれまでの研究結果を踏まえより詳細に検討した。本研究で精神的ストレスの評価指標として用いたCgA は, 交感神経 – 副腎髄質系にみられる酸性糖タンパク質であり, 副腎髄質よりカテコールアミンとともに血中に放出されることが報告されている14)。また, 自律神経系の賦活により顎下腺導管部より唾液中に放出される15)。CgA は肉体的ストレスよりも精神的ストレスに対して敏感に反応し, 非侵襲的で, 随時性, 簡便性に優れた有用なバイオマーカーである11)。本試験において, 有意差は観察されなかったが安静時と比較してストレス負荷直後で CgA濃度が上昇し, ストレス負荷試験によって被験者がストレスを感じたことが CgA の結果からも推察された。試料間においては, いずれの区においてもGABA 摂取群が対照群よりも低値であった。α-アミラーゼは, 唾液や膵液に含まれる消化酵素の一つであり, 唾液中のα-アミラーゼは口腔内の唾液腺で合成される。交感神経系の亢進に伴い,唾液中のα-アミラーゼは増加する16, 17)ことからバイオマーカーとして利用できる13,18)。本試験では, ストレス前摂取区において有意な低下あるいはストレス時の上昇抑制がみられた。また, ストレス後摂取区では有意な差は観察されなかった。生化学的ストレス指標においては, 摂取時期に関わらずストレス抑制効果を示唆した。これまでに, ストレスならびに精神疲労を主観的指標(VAS)を用いて評価した研究も数多く報告されている。Kimura ら19)は緑茶成分であるL-Theanine の精神的ストレス低減作用を明らかにする一環として VAS を用いた主観的ストレス評価を行い, L-Theanine の摂取が主観的ストレスを低減させると報告した。また, 同研究において主観的ストレス評価と生理的ならびに生化学的ストレス評価の結果が一致していることが認められており, 主観的指標と客観的指標に相関があることが確認されている。本試験においてはストレス前摂取区では,「疲れ」および「気分」の項目で有意な差が観察された。一方, ストレス後摂取区においては有意差は認められなかった。増田ら20)は疲労度とストレスに正の相関があることを述べている。以上の報告はGABA 摂取によりストレスが緩和される可能性があることを示唆していた。本研究の主観的ストレス(VAS)の結果ではストレス負荷の前に GABA を摂取した方がよりストレス抑制に寄与するものと推察された。体表面温度測定の結果, ストレス前摂取区では体幹部(背中)で有意な体温の上昇抑制がみられた。またストレス後摂取区では, 末梢部(掌, 手の甲,手指, 足指)において有意に高値を示すとこが観察された。末梢部における体表面温度は, 全般的な交感神経活動を反映し, 自律神経系の覚醒度を反映する指標として用いられており, 一般的には精神的ストレスにより, 交感神経が亢進し, 皮膚温が低下することが知られている。反対に, リラクゼーション状態や不安を低減した状況下では, 皮膚温は上昇することが報告されている21)ことから, 本試験に用いたストレス負荷試験が被験者に対して一定のストレスを与えていることが確認された。本試験においては, 摂取時期に関わらず, GABA 摂取によりストレスが抑制される可能性が考えられた。血圧においては, ストレス後摂取区で有意な差が観察されたが, 2区間における関連は見いだせなかった。高橋ら22)の研究において, 血圧が高めの人に1日3 g の GABA を摂取させた結果, 正常値レベルまで血圧が低下する作用が認められている。これに対して, 健常人に摂取させた場合には血圧低下作用がなかったことも報告されている。また, 風見ら23)の研究においても, GABA 含有酵母エキスを配合した和風調味料(GABA20 mg/ 日)を血圧が高めの人と正常血圧の人を対象に摂取させた結果, 同様の結果が得られている。本試験での被験者の平常時血圧は正常血圧であったため, GABA 以外の要因が結果に反映された可能性が高いと思われる。本研究のストレス評価に用いた CgA 濃度, α-アミラーゼ活性, VAS および体表面温度の結果より,GABA を摂取することで微弱ながら抗ストレス効果を示すことが推測された。特に, 生化学的ストレス指標のα-アミラーゼおよび主観的ストレス指標の VAS の結果より, 精神的ストレス前に GABA を摂取した方がよりストレス抑制効果が見られる可能性が示唆された。本試験で用いたストレス評価指標は, 本試験で行った被験者数では検出力が10~90%であった。検出力が80%以上であった血圧および脈拍においては, ストレス負荷後に GABA を摂取した際に有意差が認められたため, 精神的ストレスと血圧および脈拍には関連があると推察された。また, 検出力が80%以下であったその他のストレス評価指標に関しては, 被験者数が不足していたため顕著な差異を認めることができなかったと思われる24)。そのため, 被験者数を増やし更なるデータの蓄積が必要である。また, 今後は, 近年ストレス評価に用いられている脳波測定などの新たな評価指標を用いた研究が行われているため25)それらの検証を行い, 本試験で用いた測定指標との整合性をとる必要があろう。

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